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デコ平に星は落ちているか (五色沼)   

私がまだスキーなどをしていたとき、そのテレビコマーシャルを見ました。
雪の中に大きなアルファベットが落ちていて、それを人形のスキーヤーが眺め指さしているコマーシャル。新しいホテルのオープニングのCMでした。
なぜだかそのCMが忘れがたく、五色沼を見に行く宿にそのホテル「グランデコ」を選びました。なんだか本当に林の中にアルファベットやら星やらが落ちていそうな気がしたのです。

2003年9月27日 土曜日
 新幹線で郡山まで行く。新幹線の中で食べた東京弁当という東京の老舗の味を詰めた弁当が非常に美味。1600円も出した甲斐があったというもの。
 女性のグループを筆頭にした旅行客、地元の高校生が6:4というお決まりの車内構成の在来線で猪苗代駅につく。スキー場で有名な猪苗代、なにかあるかと思いきや駅前はなにもない。北の牧場を思わせる大きな木が駅前に移植されたかのように立っているだけ。
   猪苗代駅前   バスの中

 ホテルのピックアップを午後2時にしていたので、猪苗代湖にバスで行ってみる。 
 猪苗代湖はボートと遊覧船があるだけでこれまた淋しいところだ。他にやることもなさそうなので、カメの親子の遊覧船に乗る。同乗したおじさんが「お、畏れ多いな」と言うので見ると、「天皇陛下ご乗船」だかの立て看板が。
 磐梯山を見ながら湾内を巡る。特に見所はないけれど、雲と風が心地よい。秋だ。

  遊覧船からの眺め  名もなきお花畑

 遊覧船を下りて湖のほとりをぶらぶらすると、瀕死の大きな茶色の蛾が波打ち際にいた。羽根を震わせているがもうその柔らかい身体を持ち上げるだけの力がないらしい。蛾といえば、小学校の時の林間学校だかを思い出す。大きな薄青色の蛾に男の子達が洗剤をかけていたことを。その蛾は卵を産んでいる最中だった。蛾の不気味さと男の子たちの行為の残酷さが絡まって強烈に覚えている。蛾の死。そういうタイトルのエッセイか短編をウルフが書いていた。内容は忘れてしまったけど。
 やることもないので、近くの天鏡閣という有栖川宮様の別荘を見に行く。『本格小説』に出てきたお金持ちの別荘生活をふと思い出す。私は夏に海に行くよりも高原に行く方が好きなのだ。
              別荘生活

Y君が「どの遊覧船に天皇陛下を乗せるかきっと相当もめたに違いない」などと言い出す。遊覧船にはイルカ号と白鳥号とカメ号があったのだ。きっと長寿で縁起がいいのでカメ号になったのではないか等と話ながらバスに乗って猪苗代ビール館へ行き、昼食。猪苗代ビールとソーセージを食べる。野口英世記念館は飛ばす。
           カメ号はまつげを持っている!

 猪苗代駅に戻るとホテルのバスが来ていた。乗客は我々と白人女性・黒人男性のカップル。35分ほどでホテルに着く。
 知らなかったのだがこのグランデコは東急系のホテルらしい。どうりで馴染みのある雰囲気(私は田園都市線育ち)、とよくわからない感想を持ちながらショップをぶらぶらするとあのCMの絵はがきがあった。そうそう、これだったよなぁと絵はがきを買う。
 部屋で一休みしてからプールに泳ぎに行く。Y君は風呂がいいというので、それぞれに行く。プールは屋内、屋外とあって、屋外にはジャクジーもある。高原特有の爽やかな空気の中、芝生に並ぶ白い椅子を眺めながらジャグジーに浸かっていると思わず「極楽、極楽」なんて呟いている。暑い最中、休まず仕事をしたのだ。これくらいは許される、と思うことにする。
 風呂/プールから上がって、夕食までホテルのまわりを散歩。写真でみたイメージでは林の中にあるのかと思ったけど、林はない。地図を見るとここらはデコ平というらしい。グランデコが土地を買い取ってそう名づけたのか、デコ平からグランデコと名づけたのか。雪のないスキー場は殺風景でとりとめもなく、どことなくルネ・マグリット的な雰囲気の夕暮れ。
      夕暮れホテル

  夕飯は洋食。前日は粗食だったので我慢した甲斐があったというもの。食後、二人でホテルの中のリフレクソロジーに行く。またも「極楽、極楽」と呟く私。

2003年9月28日 日曜日
 五色沼までの送迎バスがあるとのことだったが、なぜか朝の8時半に出ている。なぜ、そんなに早いんだろう? と疑問を感じながらも車がないので、早起きしてそれに乗る。
 五色沼遊歩道を歩く。昨日夕方に降った雨で道はぬかるんでいる。
 五色沼(正確には大小様々な沼が点在しているわけだけど)は明治21年に磐梯山が噴火した時に川が岩屑で堰き止められて出来たものらしい。たった100年弱でこうにも自然が回復するとは本当に驚き。それとともに、決して消すことの出来ない化学物質や核廃棄物などは本当に異常なものなのだと実感する。
 第一の沼が突然見えてきた。青沼。青緑色の沼を背の高い草が守るように取り囲んでいる。草が大事に守っているのが分かるようなかわいい色。絵筆を洗った後のような水の色。

 
                       五色沼の表情

 五色沼とは言うが五色の沼があるのではなく、こうした微妙に異なる青緑色の沼がいくつかる。五色もないだろうと思っていたのだが、赤沼の前では思わず「赤くない」と言ってしまった。まあ、赤くないだろうとは思っていたんだけど。草の根元がそういえば赤いかな、という程度。それでも、ひとつひとつの沼の前で「沼と私」といった感じで写真をとってもらう。
    みどろ沼   赤くない赤沼

 最後の一番大きな毘沙門沼でボートに乗る。沼を覗き込むと青緑色の水の中に背の高い水草が生えている。沼を取り囲む木々もところどころ紅葉が始まっていて、しみじみと秋だなぁと思う。
   沼の水草   毘沙門沼でボート遊び

 ホテルの迎えのバスが12時45分に来る。なんでこんなに早いのだろう、と思いながらも、それに乗ってホテルに帰り、昼食。静かなホテルの昼食。午後からは雨、昨日もそうだった。その後、昼寝。起きてプール&風呂(「極楽、極楽」)。
 夜は和食。その後またリフレクソロジーに行ってしまった。双方、昨日の倍の時間にしてしまった。

2003年9月29日 月曜日
 今回の旅の目的は五色沼を見ることだったので、見てしまうと他にやることがない。喜多方にでもいって喜多方ラーメンでも食べるかとロビーで相談していると、ホテルの前を自転車に乗った人が通り過ぎていく。
 「いい天気だし、自転車もいいね」
 ということで、思いつきで喜多方行きをやめ、自転車を借りて山を下る。秋風に吹かれながら、湖を見下ろしながら、山道を下りる。
 一番最初に見えた小野川湖で自転車をとめて散歩。広くて淋しい湖だった。まわりに古いバンガローや民宿があるのが、また淋しく感じられるのだ。以前読んだサンカの人々の話をふと思い出す。古い桟橋でこの辺り住民らしい人々が集まって話をしている。なんだか暗い気持ちになって、早々に湖を後にする。
 ホテルの寮に自転車を乗り捨てることになっていたので、あまり遠くまで行けない。ということで、裏磐梯ビジターセンター行って、裏磐梯の自然についてのビデオをみたり、残雪を利用した冷房を体感したりする。ここがよく出来た施設で、展示も面白い。ビデオの中で観光ボランティアの男性が、ブナの木には豊作の年と凶作の年というのがあると話していた。それがいかにまわりの動植物と連動しているかということを聞いていると、リタイアした時にはこうした所で観光のボランティアなどして暮らしたいなぁなどと思う。その土地の自然というものはやはりいくつもいくつもの季節を目前にして変化を感じないと、その豊潤さや驚異が実感できないんじゃないかと思う。短い旅行をして世界を見て回るのもそれはそれで豊潤だけれども、小さな自然の繰り返しを側で感じるというのもそれに負けないくらい豊かなものだ。100年で快復した自然ということもあるせいか、余計に自然の不思議さを感じた森だった。
 その後、昨日行った毘沙門沼に行きまたボートに乗る。月曜日なので人が少なく、昨日は混んでいたより青緑色が濃い方へ行くことができた。五色沼の不思議な色は、沼の中にあるコロイド粒子の層に光が反射してできるらしい。ビジターセンターのビデオではそれは白い層で、その中に魚が出たり入ったりしていた。
 さすがにもうすることもない。新幹線の時間を早め帰る。ビジターセンターで売っていたパンフレットを読みながら東京へ帰る。今度は冬の宿り木がみたいなぁと思う。宿り木は常緑なので、葉が落ちた森の中ではひときわ目を引くとのこと。ヨーロッパの人々はオークに寄生する宿り木をオークの命だと思っていたらしい。

 変わった花   色の境界


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